Q1 コーティング工具でCVD工具とPVD工具がありますが、どう使い分けるのですか?
A
CVDとは、Chemical Vapor Deposition (化学蒸着法)でPVDとは、Physical
Vapor Deposition (物理蒸着法)の略です。それらの特徴は以下の通りです。
CVD法
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PVD法
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@ 全面均一につく
A 量産に適する
B 母材の抗折力が低下する
C 母材に劣化層が発生しやすい
D 母材によっては軟化する
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@ 設備的に量産に不適
A 母材の抗折力は低下しない
B 母材の劣化層の発生無し
C 耐チッピング性に優れる
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処理温度 900〜1100℃
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処理温度 400〜600℃
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用途的には両者に特別の限定はなく、それぞれの特徴を活かして利用されますが、CVDは旋削用に、PVDはフライス用に利用される場合が多いようです。
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京セラのコーティング工具には、現在以下のものがございます。
CVD工具 --- CR7015、CR7025、CR9025、
CA225、CA5025
(何れも母材は超硬)
PVD工具 --- PR510、PR610、PR630、PR660、PR730、PR930、
PV30、PV60、PV90
(PRシリーズは、何れも母材は超硬、 PVシリーズは何れも母材はサーメット)
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それら材質の性能の詳細につきましては、弊社セラチップ総合カタログの「チップ材種編」をご覧下さい。
Q2 チップブレーカーは何故いろいろな形状があるのですか?
A
金属切削では切屑をいかに処理するかが最も重要なポイントであると言われている位
に、切屑処理は大事な要素です。チップブレーカーとは切削により出てくる切屑を処理するために工具(チップ)の上に設けられた突起や溝のことです。
チップブレーカーの目的としては以下のものが上げられます。
@切屑を切断し、切屑の長さ、方向性をコントロールする
A切削抵抗を低減し、切れ味をよくする
B工具寿命を長くする
もし、このチップブレーカーがなければ、切屑は刃先から真っ直ぐに伸びて出てきて、
作業者が危険な状態になったり、機械に複雑に絡みついたりして作業効率は著しく落ちることになります。
又、被削材の材質や切削条件により、切屑の出方も大きく変わります。そのため、どのような状態でも、切屑を切断しうまくコントロールするために、いろいろな形状のチップブレーカーが開発されています。
京セラでは、金型でチップ上面に設けられた金型ブレーカーとチップ上面に研磨されて設けられた研磨ブレーカー、及びセラミック工具の場合等にホルダーに取り付けるためのブレーカーを標準化し、用途、切削条件に合わせて最適なチップブレーカーを選んで頂けるように各種準備しております。
チップブレーカーの種類、最適条件等につきましては、セラチップ総合カタログの「チップブレーカー選択基準」をご覧下さい。
Q3 旋削加工で仕上げ面 粗さを良くするには、どのような方法がありますか?
A
最も一般的な方法は、送り(f)を小さくして、工具刃先のノーズR(R)を大きくすることです。理論粗さは、Ry=fxf/8Rx1000にて表されるため、送りfを小さくすること、ノーズRを大きくすることにより、Ry値を小さくすることが出来ます。
しかし、加工条件上、送りを下げられず、ノーズRも変えられない時には切削速度を大きくすることも、仕上げ面
粗さをよくすることにつながります。速度が上がり、構成刃先が出来にくくなるからです。
Q4 旋盤加工で切屑処理が悪いため、改善したい。どのような方法がありますか?
A
まず、その被削材と切削条件に合ったチップブレーカーが選択されているかを確認してください。最初にチップブレーカーを選定した時の切削条件が後に変わっている場合も
よくありますので、まずご確認下さい。
正しいチップブレーカーが選定されており、送り、切り込み条件も正しい場合は、切削速度を下げることで切屑処理を改善する方向にあります。切削速度が下がることにより切屑が厚くなり、折れ易くなるからです。
Q5 溝入れ加工で、溝底面 の光沢が得られない。 何か対策はありますか?
A
溝底面の光沢を出す方法として、下の方法が考えられます。
- 切削速度を上げる
- 刃先をハンドラッパーで軽くホーニングする
- ドウェル・モーション(溝底面 での工具の送りを一時停止する)
これは、@速度が上がれば、構成刃先が出来にくいこと、A刃先が尖った状態よりもいくらか丸みを帯びた状態の方が、加工面
は光沢が出ること、Bドウェルにより、しばらく刃先を底面に当てて加工面の光沢を出すものです。
Q6 ステンレスSUS304を加工しているが、刃先に負担がかからないようにと思い、切り込みと送りを小さくしたら、逆に工具の寿命が短くなった。何故ですか?
A
ステンレスの場合には、表面 を加工した直後に、表面上に加工硬化という現象が発生します。 そのため、切り込みと送りを小さくし過ぎますと、工具の刃先がこの加工硬化した部分を切削するために、工具の刃先が傷められて寿命が短くなったものと思われます。
加工後ステンレスの表面から0.1〜0.2mmの深さまで硬化しますので、対策としては、切削条件では切り込みは0.5mm以上、送りも0.2mm/rev程度にすることをお奨めします。
Q7 アルミニウムを 上手に加工するにはどうしたら良いですか?
A
アルミニウムの加工では、切屑の排出性と溶着を防ぐことが重要なポイントです。
具体的には、切れ味を良くするために刃先をシャープエッジにして、すくい角を大
きく取り、高速高送りで加工して下さい。その際に旋削であれば水溶性の切削液をかけて切屑を洗い流すことも溶着を防ぐ上で有効です。フライス加工であればエアブローにて切屑を吹き飛ばして下さい。又、工具のすくい面
、逃げ面に鏡面加工を施してやることもアルミニウムを上手に加工する上で非常に有効です。
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